コロナの味覚・嗅覚障害
コロナウイルスによる味覚障害の原因
味蕾への直接的なウイルス感染
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、舌や咽頭に分布する「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚細胞に作用すると考えられています。味蕾は甘味・塩味・酸味・苦味・うま味を感じる重要な器官で、ウイルスが感染すると炎症や細胞障害を起こし、味覚低下につながります。
特に、味蕾や支持細胞にはウイルスの侵入口である ACE2受容体 が多く存在し、感染の足がかりとなることが報告されています。
嗅覚障害に伴う二次的な味覚低下
「味」は舌で感じる成分と、鼻で感じる香り(風味)の両方で構成されています。そのため、嗅覚が低下すると「味がしない」と感じることがあります。鼻づまりや嗅覚障害を合併する場合、この影響はより強く現れます。
特に、鼻づまりや嗅覚の低下が同時に起こっている場合、この影響はより強く現れます。
コロナウイルスによる嗅覚障害の原因
嗅細胞・嗅神経の損傷
ウイルスは鼻腔上部の「嗅上皮」や嗅神経の支持細胞に侵入し、炎症を起こすことで嗅覚機能を低下させます。ここでもACE2受容体の存在が関与しているとされています。
中枢神経への影響
一部の症例では、嗅球や大脳皮質といった中枢の嗅覚経路に炎症や変性が起こることがあり、重度の嗅覚障害や「幻臭(存在しないにおいを感じる症状)」を引き起こす場合があります。
コロナウイルスによる味覚・嗅覚障害の回復経過
研究によると、多くの症例では自然回復が期待できます。
- 味覚障害:数週間~数ヶ月で改善することが多く、70~80%の方は半年以内に回復傾向を示します。
- 嗅覚障害:約80%は1年以内に改善しますが、20%前後は1年以上続くこともあります。
回復には年齢、基礎疾患の有無、感染時の重症度などが影響します。
治療法と日常生活での対応
内服薬
当帰芍薬散
血流促進や神経機能改善を期待して処方される漢方薬です。
新型コロナ後遺症の嗅覚障害や味覚障害が改善したとの報告も多くあります。
ビタミンB群
末梢神経の再生を助け、補助的治療として用いられます。
嗅覚トレーニング
嗅神経を再教育する目的で行うリハビリです。
バラ・レモン・ユーカリ・クローブなどの香りを1日2回、各10秒ほど嗅ぐ方法が推奨されています。
数週間~数ヶ月の継続が効果的です。
食事の工夫
味覚障害は亜鉛を多く摂取することで治ることもあります。
亜鉛を多く含む食材としては
牡蠣、しじみ、赤身牛肉、豚レバー、卵、納豆
などがあります。
自宅でできるセルフケアと注意点
- 嗅覚トレーニングは刺激の強い香りから始めず、マイルドな香り(ラベンダーなど)からスタート
- 睡眠不足やストレスは神経の回復を妨げるため、規則正しい生活習慣を意識する
- 1ヶ月以上症状が続く場合や、においの異常(変なにおい・全くわからない)がある場合は耳鼻科の受診を検討しましょう
受診の目安と医療機関への相談タイミング
以下のような症状がある場合は、早めの耳鼻咽喉科受診をおすすめします。
- 味やにおいがまったく分からない状態が1週間以上続く
- 味覚・嗅覚に異常があり、日常生活に支障をきたしている
- 幻臭(存在しないにおい)を感じる
- 感染回復から1ヶ月以上経過しても症状が改善しない
まとめ
新型コロナウイルスによる味覚・嗅覚障害は、ウイルスが味蕾や嗅細胞に直接作用することで起こります。多くのケースで自然に回復しますが、一部では長期化することもあります。漢方薬や嗅覚トレーニングの併用で改善が期待でき、早期の対応が重要です。
症状が長引く場合は、耳鼻咽喉科での専門的な診察をおすすめします。
よくある質問 (FAQ)
Q1. コロナで味がしなくなるのはなぜですか?
舌の味蕾細胞にウイルスが感染し、炎症や機能低下を起こすためです。
Q2. においがわからなくなるのはどこが障害されるのですか?
鼻の奥の嗅上皮や嗅神経、さらには脳の嗅覚中枢の異常によって起こります。
Q3. 嗅覚が低下すると味覚も落ちますか?
はい。風味の多くは嗅覚に依存しているため、「味がしない」と感じます。
Q4. 自然に治ることはありますか?
多くは数週間~数ヶ月で回復しますが、長期化する場合は治療が必要です。
Q5. 治療法には何がありますか?
ビタミン剤、漢方薬、嗅覚トレーニングなどがあります。
Q6. 嗅覚トレーニングとは何ですか?
特定の香りを意識的に嗅ぎ、嗅神経の再生を促すリハビリです。継続が重要です。
Q7. 自宅でできる対策は?
アロマ、生活習慣改善、ストレス軽減などが効果的です。
Q8. どれくらい続いたら病院へ?
1ヶ月以上続く場合や、異臭・幻臭がある場合は受診しましょう。
Q9. 幻臭があるのですが大丈夫ですか?
幻臭は神経異常の可能性があるため、早期受診が必要です。
Q10. 回復には体質や年齢も影響しますか?
はい。年齢・基礎疾患・重症度によって回復スピードが異なります
参考文献
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