真菌症(白癬・カンジダ・マラセチア)
真菌症とは?皮膚に感染するカビ
真菌症(しんきんしょう)とは、カビの一種である真菌が皮膚に感染して起こる病気の総称です。
湿気や汗の多い環境、免疫の低下、皮膚バリア機能の低下などが影響し、全年齢層に見られます。
皮膚真菌症としては、「白癬」「カンジダ症」「マラセチア関連皮膚疾患」が代表的です。
皮膚に影響を与える主な真菌の種類
| 分類 | 代表的な疾患 | 特徴 |
|---|---|---|
| 皮膚糸状菌 | 白癬 | 角質層・爪・毛に感染 |
| 酵母様真菌 | カンジダ | 粘膜や爪周囲にも感染 |
| マラセチア属真菌 | 癜風、脂漏性皮膚炎 | 常在菌。皮脂部位で過増殖して発症 |
白癬(はくせん)とは?もっとも身近な皮膚真菌症
原因と感染経路
白癬は皮膚糸状菌による感染症で、「水虫」「たむし」「しらくも」などの俗称でも知られています。
人や動物、床・スリッパ・タオルなどが感染源となり、皮膚の小さな傷から侵入して感染します。
白癬の種類と部位別の症状
| 種類 | 主な部位 | 症状 |
|---|---|---|
| 足白癬(水虫) | 足趾間、足底 | かゆみ、皮むけ、水ぶくれ、角質肥厚 |
| 爪白癬 | 爪 | 白濁・肥厚・変形、もろくなる |
| 体部白癬 | 胴体・四肢 | 赤い円形斑。中心が治り外側が拡大 |
| 頭部白癬 | 頭皮 | 脱毛、かさぶた、膿疱 |
| 股部白癬(いんきんたむし) | 鼠径部・陰部 | 赤み・かゆみ・明瞭なふちの発疹 |
診断方法
- 顕微鏡検査(KOH法):菌糸を確認
- 培養検査:菌種の特定に有用
治療法と治療期間
- 外用薬:ラノコナゾール、テルビナフィンなど
- 内服薬:イトラコナゾール、テルビナフィン(爪や広範囲例)
- 期間目安:足白癬1~2ヶ月、爪白癬6ヶ月以上かかることも
カンジダ症とは?免疫や湿気が関係する真菌症
原因と発症メカニズム
Candida albicansなどの酵母菌が皮膚や粘膜に増殖して発症。
常在菌ではあるものの、湿気や免疫力の低下で症状が現れます。
種類別の症状
| 種類 | 好発部位 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 皮膚カンジダ症 | 指間、爪周囲、乳房下、陰部 | 湿った赤み、白い鱗屑、びらん、かゆみ |
| 口腔カンジダ症 | 舌・口腔内 | 白苔、痛み、味覚異常 |
| 陰部カンジダ症 | 外陰部・陰茎 | 強いかゆみ、白いおりもの、灼熱感 |
| 乳児寄生性皮膚炎 | おむつ部位 | 発赤、小膿疱、皮むけ |
診断方法
- KOH法、グラム染色で菌を確認
- 培養検査:再発例や重症例で実施
治療法と生活改善
- 外用薬:ミコナゾール、クロトリマゾールなど
- 内服薬:フルコナゾールなど(広範囲・再発時)
- セルフケア:通気性の良い衣類、湿気対策が重要
マラセチア関連皮膚疾患とは?常在菌による皮膚トラブル
マラセチアの特徴と増殖条件
マラセチア属真菌は、皮脂腺に好んで住み着く常在菌。
皮脂や汗の増加で過剰に増殖し、炎症性皮膚疾患を引き起こします。
代表的な疾患と症状
| 疾患名 | 好発部位・症状 |
|---|---|
| 癜風(でんぷう) | 背中・胸・首:白・褐色斑、軽いかゆみ、鱗屑 |
| マラセチア毛包炎 | 背中・胸:赤いニキビ様の発疹 |
| 脂漏性皮膚炎 | 顔(鼻周囲・眉間)・頭皮:赤み、フケ、かゆみ |
診断と治療法
- 顕微鏡で特徴的な「spaghetti and meatballs」構造確認
- ウッド灯で黄緑色の蛍光を確認することも
治療法
- 外用抗真菌薬(ケトコナゾールなど)
- 抗真菌シャンプー(癜風や脂漏性皮膚炎に有効)
- 内服薬(広範囲・難治性に対して)
真菌症の再発予防と自宅でできるセルフケア
再発予防のポイント
- 清潔と乾燥を保つ(特に入浴後)
- 通気性の良い衣類や靴を選ぶ
- 汗をかいた後はこまめに着替え
- タオルやスリッパの共用は避ける
- ペットからの感染にも注意(特に白癬)
自宅ケアの注意点
- 市販薬の自己判断使用は慎重に(悪化リスクあり)
- 患部をかかないように清潔を保つ
- 症状が長引く・悪化する場合は早めに皮膚科受診を
まとめ
真菌症は白癬・カンジダ・マラセチアなどが原因で起こる皮膚のカビ感染症です。
見た目が似ていても原因菌や治療法が異なるため、自己判断での市販薬使用には注意が必要です。
再発や慢性化を防ぐには、正しい診断と治療の継続、清潔・乾燥を保つ生活習慣が重要です。
気になる症状がある場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q: 真菌症とは何ですか?
真菌(カビ)が皮膚に感染して起こる病気の総称です。
Q: 水虫と白癬は同じですか?
はい、白癬のうち足にできたものを水虫と呼びます。
Q: カンジダ症は性病ですか?
外陰部カンジダ症はいわゆる性病ではありません。
多くの場合、体調や環境の変化(抗菌薬・妊娠・糖尿病・免疫低下・湿潤)がきっかけで、もともと皮膚や粘膜にいるカンジダが増えて症状が出ます。気になる症状が続くときは自己判断せず受診してください。
Q: マラセチアとは何ですか?
皮膚の常在菌で、過剰に増えると脂漏性皮膚炎や癜風を起こします。
Q: 治療期間はどのくらいですか?
足白癬は通常1~2か月が目安ですが、角化型ではより長期になることがあります。
爪白癬は原則6か月以上を要し、足趾では爪の伸びが遅いため10~12か月に及ぶこともあります(病変範囲や爪の伸長速度により前後します)。
治療中断は再発の原因となるため、症状が軽快しても医師の指示に従って継続してください。
参考文献
- 日本皮膚科学会. 『皮膚真菌症診療ガイドライン 2019』
- Gupta AK, et al. "Tinea Pedis and Onychomycosis: Diagnosis and Management." Dermatol Clin. 2021
- Calderone RA, Clancy CJ. "Candida and Candidiasis." ASM Press
- Prohic A, et al. "Malassezia furfur in Skin Diseases." Clin Dermatol. 2016
- 日本臨床皮膚科医会. 『外用抗真菌薬の使い方』改訂版
