脂漏性皮膚炎
「顔の赤みやかゆみが続いている」「フケが気になって人目が気になる」 それは脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)という皮膚疾患の可能性があります。
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部分に炎症を起こす慢性的な皮膚疾患です。乳児や成人にみられ、再発しやすく生活の質にも影響を与えることがあります。
脂漏性皮膚炎とは?
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは、皮脂腺が発達している部位——
主に頭皮、顔(特に眉間や鼻周囲)、耳の後ろ、胸部、背中上部などに好発する慢性の炎症性皮膚疾患です。
皮膚の赤み(紅斑)、かゆみ、乾燥や脂っぽい皮むけ(鱗屑)、フケが主な症状で、慢性的に増悪と寛解を繰り返すのが特徴です。
この疾患は、乳児期と成人期に好発する二峰性の年齢分布を示します。
・乳児脂漏性皮膚炎は、生後2週間~3か月頃に見られ、頭部に黄色い脂性のかさぶたのようなフケ(乳児脂漏性湿疹)が特徴です。通常は一過性で自然軽快します。
・成人型は20〜50代の男性に多く、性ホルモンの影響で皮脂分泌が活発な時期に発症しやすいとされています。女性にも見られますが、比較的頻度は低めです。
また、男性ホルモン(アンドロゲン)の影響で皮脂分泌が活発な男性や、**免疫力の低下している方(HIV感染者、神経疾患患者など)**では重症化することもあります。
一見軽微な皮膚症状であっても、見た目への影響や慢性的なかゆみによるQOL(生活の質)の低下を引き起こすことがあり、早期診断・適切な治療・スキンケアの継続が重要です。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の発症には、複数の要因が関与しています。
1. 皮脂の過剰分泌
皮脂は肌を保護する役割がありますが、過剰に分泌されると毛穴の詰まりや皮膚環境の悪化を招き、炎症の原因になります。
2. マラセチア(常在菌)の関与
皮膚に常在する真菌「マラセチア」は通常は無害ですが、皮脂の多い環境で増殖すると炎症を引き起こす要因になります。
3. 皮膚バリア機能の低下
乾燥や摩擦、ストレスなどによって皮膚のバリア機能が低下すると、外部刺激に敏感になり、炎症が生じやすくなります。
4. ホルモン・生活習慣・ストレス
睡眠不足や偏った食事、ストレス、疲労などの生活習慣の乱れも脂漏性皮膚炎の悪化因子です。
脂漏性皮膚炎の症状
脂漏性皮膚炎では、以下のような部位ごとの症状が見られます。
|
発症部位 |
主な症状 |
|---|---|
|
頭皮 |
フケ(乾性または脂性)、かゆみ、赤み |
|
顔(眉間・鼻周囲) |
赤み、かさつき、皮むけ、小さなブツブツ |
|
耳の後ろ |
湿疹、かさぶた、皮膚の荒れ |
|
胸部・背中 |
赤みを伴う細かい皮むけ、かゆみ |
※乳児では「乳児脂漏性皮膚炎」として、生後2週〜3ヶ月頃に頭皮や額に黄色っぽいかさぶたのようなフケが見られることがあります。
鑑別が必要な他の疾患
脂漏性皮膚炎と似た症状を呈する疾患には以下のようなものがあります。
|
疾患名 |
鑑別ポイント |
|---|---|
|
アトピー性皮膚炎 |
乾燥肌・アレルギー素因あり。頬や首に出やすい。 |
|
接触皮膚炎 |
化粧品やシャンプーなどへの反応。使用中止で改善。 |
|
尋常性乾癬 |
境界明瞭な紅斑と厚い鱗屑。頭皮に出やすい。 |
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カンジダ性皮膚炎 |
湿潤部に好発。掻破で拡がりやすい。抗真菌薬が有効。 |
|
酒さ・酒さ様皮膚炎 |
鼻・頬の赤み、小さなブツブツ。ステロイド副作用の可能性も。 |
検査と診断方法
基本的には問診と視診で診断しますが、必要に応じて以下の検査を実施します。
- 真菌検査(KOH法):マラセチアやカンジダ感染の有無を確認
- アレルギー検査:接触皮膚炎との鑑別に使用
脂漏性皮膚炎の治療法
脂漏性皮膚炎は再発しやすい疾患ですが、以下の治療により症状のコントロールが可能です。
1. 外用薬(保険適応)
- 抗真菌薬(ケトコナゾールなど):マラセチアの増殖を抑える
- ステロイド外用薬:炎症・かゆみを抑える(使用部位・期間に注意)
- カルシニューリン阻害薬(プロトピック®など):顔などへの使用に適する
2. 洗浄剤・シャンプー
- ケトコナゾール含有薬用シャンプーの使用
- 低刺激の洗顔料・保湿剤の併用も重要
3. 生活習慣の改善
- 睡眠・栄養・ストレスの管理が治療効果を高めます
再発予防とセルフケアのポイント
脂漏性皮膚炎は慢性化・再発しやすいため、以下のセルフケアが重要です。
- 洗顔・洗髪はやさしく行い、しっかりすすぐ
- 必要以上に皮脂を取りすぎず、適切な保湿を忘れずに
- 顔や頭皮をこすらない
- ストレスをためない生活を意識
- ステロイド外用薬は自己判断で長期使用しない
皮膚科受診の目安
以下のようなケースでは、皮膚科専門医の診察をおすすめします。
- 症状が長引く、または繰り返す
- 市販薬で改善しない
- かゆみや赤みが悪化している
- 顔や頭皮の見た目が気になる
- 乳児の頭皮にかさぶたがある
まとめ
脂漏性皮膚炎は、皮脂分泌の多い部位に赤み・フケ・かゆみを起こす慢性の皮膚疾患です。マラセチアという真菌が関与し、ストレスや体調の変化で悪化することも。外用薬による治療と生活習慣の見直しにより、多くのケースで症状はコントロール可能です。再発を防ぐためには、スキンケアの継続と皮膚科での定期的な診察が重要です。
脂漏性皮膚炎 よくある質問(FAQ)
- 脂漏性皮膚炎はうつりますか?
脂漏性皮膚炎は感染症ではなく、他人にうつることはありません。皮膚の状態や体質が関与しています。
- 完治しますか?
完全に治るというよりは「うまく付き合っていく」疾患です。適切な治療とケアでコントロール可能です。
- シャンプーはどんなものを使えばいいですか?
マラセチアを抑える薬用シャンプーや低刺激性の製品が有効です。洗浄力が強すぎるものは避けましょう。
- 脂漏性皮膚炎とフケの違いは?
脂漏性皮膚炎は炎症を伴う皮膚疾患で、単なるフケよりかゆみや赤みなどの症状が強く出ることがあります。
- ストレスで悪化しますか?
はい。ストレスや睡眠不足、生活の乱れは皮脂分泌や免疫バランスに影響し、悪化要因になります。
- 化粧はしてもいいですか?
症状が強い時は避けた方がよいですが、落としやすく低刺激な化粧品であれば使用可能な場合もあります。
- 脂漏性皮膚炎の子どもは将来も再発しますか?
乳児の脂漏性皮膚炎は多くが自然に改善しますが、思春期以降に再発することもあります。
- 治療期間はどのくらいですか?
症状によりますが、数週間で改善するケースも多く、再発を防ぐためには継続的なケアが大切です。
- 保険は使えますか?
はい。脂漏性皮膚炎の診療には、外用薬など保険適用の治療が可能です。安心してご相談ください。
- 皮膚科ではどんな検査をしますか?
基本は問診と視診で診断しますが、必要に応じて真菌検査(KOH法)やアレルギー検査を行います。
参考文献
- 日本皮膚科学会「脂漏性皮膚炎診療ガイドライン 2011」
- Borda LJ, Wikramanayake TC. Seborrheic dermatitis and dandruff: a comprehensive review. J Clin Investig Dermatol. 2015;3(2):10.
- Gupta AK, et al. Seborrheic dermatitis: a review. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014;28(12):1467-1473.
- 日本臨床皮膚科医会ガイドライン「日常診療における皮膚真菌症の治療指針」
