くしゃみ
くしゃみの役割とメカニズム
くしゃみとは、鼻腔内に入った異物(ホコリ、花粉、ウイルスなど)を排出するための生理的な防御反射です。
主に鼻粘膜の三叉神経末端の刺激によって誘発され、脳幹の「くしゃみ中枢」を経て、瞬間的に腹筋・横隔膜・声帯・顔面筋・まぶたなどを連動させて、時速100~150kmともいわれる強い空気を口と鼻から同時に噴出します。
くしゃみは1回で終わることもありますが、刺激が強い場合や持続している場合には連発することもあります。
くしゃみの原因とは?
くしゃみの原因は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の3つに分類できます。
生理的なくしゃみ
健康な人にも見られる正常な反応で、鼻粘膜が一時的に刺激されて起こります。
- 原因:ホコリ、冷気、乾燥、唐辛子などの刺激性のにおい
- 特徴:発熱や鼻水などを伴わない一過性のくしゃみ
病的なくしゃみ(疾患との関係)
鼻粘膜の炎症や過敏性によって起こる、何らかの疾患が背景にあるくしゃみです。
疾患名 | 特徴 |
---|---|
アレルギー性鼻炎 | 朝方の連発くしゃみ、透明な鼻水、目のかゆみなどを伴う |
感染性鼻炎(風邪) | 発熱、のどの痛み、黄色い鼻水とともにくしゃみが出る |
副鼻腔炎 | 慢性的な鼻づまり、濃い鼻汁、後鼻漏が主体でくしゃみは少ない |
血管運動性鼻炎 | 気温差や湿度差、ストレスによって起こる非アレルギー性のくしゃみ |
その他の特殊なくしゃみ
- 光くしゃみ反射:強い光を浴びたときにくしゃみが出る。約3割の人に見られる遺伝的反応。
- 精神的くしゃみ:緊張やストレス、興奮状態で出ることがある。
- 妊娠性鼻炎によるくしゃみ:妊娠中のホルモン変化により鼻粘膜が過敏になる。
アレルギー性鼻炎とくしゃみの関係
くしゃみが止まらない原因として特に多いのが「アレルギー性鼻炎」です。
日本人の約40%が罹患しているといわれる一般的な疾患で、慢性的なくしゃみの最大の原因です。
アレルギー性鼻炎の主な症状
- 朝方に連続してくしゃみが出る
- 水のような透明な鼻水
- 鼻づまりや鼻のムズムズ感
- 目のかゆみや涙目
主なアレルゲン
- 花粉(スギ・ヒノキなど)
- ダニ・ハウスダスト
- ペットの毛
- カビ、昆虫(ゴキブリ、チャタテムシなど)
鑑別診断と検査方法
くしゃみが頻繁に続く場合は、背景にある病気を特定することが重要です。
- 鼻鏡・内視鏡検査:鼻粘膜の腫れや分泌物の状態を観察
- アレルゲン特異的IgE検査(血液):アレルギーの原因物質を特定
- 鼻汁好酸球検査:アレルギー性炎症の有無を調べる
- レントゲンやCT検査(当院では施行しておりません。):副鼻腔炎や構造的な異常の確認
耳鼻科を受診すべきタイミング
くしゃみが一時的なものであれば問題ありませんが、以下のような場合は耳鼻科を受診しましょう。
- 毎日連発するくしゃみが2週間以上続く
- 透明な鼻水や鼻づまりが慢性的にある
- 抗ヒスタミン薬が効かない、副作用が強い
- 風邪が治ってもくしゃみが続いている
- 目のかゆみや咳などのアレルギー症状がある
放置すると、副鼻腔炎(ちくのう症)や中耳炎、咳喘息などに進展することもあります。
アレルギー性くしゃみの治療法
薬物療法
- 抗ヒスタミン薬:くしゃみ・鼻水を抑える
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:鼻づまりに有効
- 点鼻ステロイド薬:鼻粘膜の炎症を抑える
アレルゲン回避
- 寝具のこまめな洗濯・ダニ対策
- 空気清浄機やこまめな掃除
- 花粉症対策(マスク・メガネ・洗顔など)
舌下免疫療法
スギ花粉・ダニに対して、アレルギー体質そのものを改善する根本治療です。
耳掃除中のくしゃみの原因とは?
耳掃除中にくしゃみが出るのは「外耳道迷走神経反射」によるものです。
外耳道には迷走神経の枝が分布しており、耳掃除によってこの神経が刺激されると、脳が「くしゃみ反射」と誤認してくしゃみを引き起こします。
これは病気ではなく正常な反射反応です。
ただし、耳掃除はやさしく行いましょう。
自宅でできるくしゃみ対策・予防
- 鼻うがい
- 蒸気吸入(加湿器・温タオル)
- 規則正しい生活習慣:睡眠不足やストレスを避ける
- 室内環境整備(ホコリや花粉が入りにくい空間づくり)
よくある質問(FAQ)
Q1. くしゃみが何度も続くのは異常ですか?
一時的なら問題ありませんが、毎日続く場合はアレルギー性鼻炎などの病気の可能性があります。
Q2. 朝だけくしゃみが連発するのはなぜですか?
アレルギー性鼻炎に多く見られる症状で、特に寝具のダニやハウスダストが原因です。
Q3. 風邪のくしゃみとアレルギーのくしゃみはどう違いますか?
風邪は発熱や黄色い鼻水を伴い、アレルギーは透明な鼻水や目のかゆみが特徴です。
Q4. くしゃみが止まらないとき、何科を受診すればいいですか?
2週間以上続く場合は耳鼻科の受診をおすすめします。
Q5. アレルギー検査では何がわかりますか?
血液検査などでスギ花粉やダニなど、くしゃみの原因となるアレルゲンを特定できます。
Q6. 舌下免疫療法はくしゃみに効果がありますか?
アレルギーの体質を改善する治療法で、特定アレルゲンによるくしゃみに効果があります。
Q7. 鼻うがいはくしゃみに効果がありますか?
鼻腔内のアレルゲンやホコリを洗い流せるため、アレルギー性のくしゃみ予防に有効です。
Q8. 妊娠中にくしゃみが増えるのはなぜですか?
ホルモン変化による「妊娠性鼻炎」で鼻粘膜が敏感になっているためです。
まとめ
くしゃみは体を守る大切な防御反射ですが、頻繁に続く場合はアレルギー性鼻炎などの疾患が潜んでいる可能性があります。
原因を見極め、必要に応じて耳鼻科での検査と治療を受けることが大切です。
特に朝方の連発くしゃみや透明な鼻水を伴う場合は早めの受診をおすすめします。
生活習慣の見直しや環境整備も、予防と改善に効果的です。