習慣性扁桃炎
「また喉が痛くなった…」「毎月のように発熱してつらい」
そんな症状に悩まされていませんか?
繰り返す咽頭痛や発熱の原因として考えられるのが「習慣性扁桃炎」です。
習慣性扁桃炎とは?どんな病気?
習慣性扁桃炎とは、急性扁桃炎を年に複数回繰り返す状態を指します。
扁桃は喉の奥にある免疫組織で、細菌やウイルスから体を守る働きをしますが、その扁桃自体が炎症を繰り返すことで、日常生活に支障をきたすことがあります。
診断基準(目安)
- 1年間に5回以上の急性扁桃炎
- 2年間連続で年3回以上
- 3年間連続で毎年3回以上
このような頻度で症状を繰り返す場合は、「習慣性扁桃炎」と診断される可能性があります。
習慣性扁桃炎の主な症状
- のどの強い痛み(咽頭痛)
- 38℃以上の発熱
- 飲み込みにくさ(嚥下痛)
- 扁桃の腫れ・赤み
- 白い膿栓(膿点)の付着
- 首のリンパ節の腫れ・痛み
- 全身倦怠感、頭痛
これらの症状が数日~1週間程度持続し、抗生物質で一時的に改善しても再発するのが特徴です。
原因とリスク因子
主な原因
- A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)やブドウ球菌などの細菌感染が中心
- 扁桃のくぼみ(陰窩)に菌がたまりやすい構造が関与
リスク因子
- 扁桃の形状や大きさ(解剖学的要因)
- 免疫力の低下(ストレス、疲労、睡眠不足)
- 喫煙や飲酒、不規則な生活
検査と診断方法
- 問診:症状や頻度、過去の治療歴を確認
- 視診:扁桃の赤みや膿栓の有無を観察
- 内視鏡ファイバー:咽頭奥の状態を確認
- 培養検査:原因菌を特定
- 血液検査:炎症マーカーをチェック
習慣性扁桃炎の治療法|保存的治療と外科的治療
保存的治療(薬による治療)
- 抗生物質
- 解熱鎮痛剤
- うがい薬
初期治療で改善すれば、保存的治療を継続します。
外科的治療|扁桃摘出術(手術)
以下に該当する場合は、手術による治療(扁桃摘出術)が検討されます。
(当院では手術は行っておりませんが、必要と判断される場合やご希望がある場合には、信頼できる専門医療機関をご紹介いたします。)
手術の適応基準
- 1年間で7回以上の扁桃炎
- 2年間連続で年5回以上の扁桃炎
- 3年間連続で年3回以上の扁桃炎
- 睡眠時無呼吸症候群の合併
- 病巣感染(IgA腎症、掌蹠膿疱症など)
- 扁桃周囲膿瘍、PFAPA症候群などの既往
扁桃摘出術について|流れと注意点
手術の流れ
- 全身麻酔
- 専用器具で口腔内を開き、扁桃を露出
- 扁桃を摘出・止血
- 術後は入院管理
術後の経過
- 痛みは7~10日間持続
- 完全回復には約2週間
- 術後出血や感染予防のため、1~2週間は激しい運動・刺激物の摂取を控える
※上記は一般的な経過の一例であり、すべての方に当てはまるわけではありません。回復期間や注意点は個人差がありますので、詳しくは担当医の指示に従ってください。
扁桃摘出手術のメリット・リスク
メリット
- 扁桃炎の再発予防
- 抗生物質の使用回数が減る
- 生活の質(QOL)の向上
リスク
- 出血(約1~5%)
- 感染症
- 麻酔による副作用
- まれに味覚や音声の変化
日常生活での予防とセルフケア
- 十分な睡眠とストレス管理
- 禁煙・節酒
- バランスの良い食事と適度な運動
- 手洗い・うがい・マスク着用で感染予防
- 口腔ケアの徹底(歯磨き・定期検診)
よくある質問(Q&A)
Q. 扁桃炎と風邪の違いは?
扁桃炎は扁桃に限定した炎症で、強い咽頭痛や膿栓が特徴。風邪は鼻水・咳などの症状も伴います。
Q. 子供と大人で違いはありますか?
子供は扁桃が大きく免疫も未熟なため、炎症を起こしやすいです。高熱や呼吸困難も起こりやすくなります。
Q. 扁桃肥大と扁桃炎の違いは?
扁桃肥大は慢性的に扁桃が大きくなった状態で、炎症を伴うとは限りません。扁桃炎が繰り返されると肥大につながることもあります。
他の病気と関連はありますか?
溶連菌感染による扁桃炎が腎炎やリウマチ熱を引き起こすことがあります。IgA腎症や掌蹠膿疱症も関連が指摘されています。
扁桃炎はうつりますか?
細菌性・ウイルス性ともに感染力があります。家族内感染も多く、マスク・手洗い・うがいでの予防が大切です。
扁桃摘出後も再発しますか?
口蓋扁桃は完全に除去されますが、他のリンパ組織に炎症が出ることはあります。違和感があれば再受診を。
妊娠中に扁桃炎になると危険ですか?
妊娠中でも治療は可能ですが、高熱などは胎児に影響する場合があるため、早めに医師の診察を受けてください。
まとめ|習慣性扁桃炎は放置せず、根本から対処を
繰り返す扁桃炎は、日常生活や仕事・学業に大きな影響を与えます。
習慣性扁桃炎は、早期に専門医の診断を受け、適切な治療を継続することが大切です。保存的治療で改善しない場合には、扁桃摘出術が有効な選択肢となります。
「また喉が痛い」と感じたときは、一度耳鼻科を受診してみましょう。
参考文献
日本扁桃研究会:「習慣性扁桃炎の診断と治療」2023年
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扁桃疾患診療の手引き 2020、日本耳鼻咽喉科学会編、金原出版
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