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急性上気道炎(風邪)

はじめに

「喉がイガイガする」「鼻水が止まらない」「咳がつらくて眠れない」
そんな症状が現れたとき、それは「急性上気道炎」、いわゆる“風邪”かもしれません。風邪は、鼻・喉・気管の入り口にあたる「上気道」に炎症が起こる感染症で、子どもから高齢者まで誰もが経験するごく一般的な病気です。

上気道とは?

「上気道」は呼吸器の入り口で、鼻腔・咽頭・喉頭から構成されます。
 上気道は単なる空気の通り道ではなく、以下のような多くの役割を担っています。

  • 吸気を加温・加湿し、冷気や乾燥から肺を守る
  • 鼻毛や粘液で異物や病原体を除去する
  • 咽頭・喉頭では飲食物の誤嚥を防ぎ、発声も担う

つまり、上気道の健康は「呼吸・食事・会話」すべてに関わる重要な器官なのです。

急性上気道炎の原因

ウイルス感染(最も多い)

風邪の約80-90%はウイルスが原因です。
 代表的なウイルスには以下のようなものがあります。

  • ライノウイルス
  • コロナウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • アデノウイルス
  • RSウイルス など

感染後1〜3日で発症し、自然に回復するケースが大半です。

細菌感染(まれだが重症化リスクあり)

溶連菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などが関与することがあります。
 ウイルス感染後に細菌が重なって起こる「二次感染」に注意が必要です。

その他の誘因

  • 冬季の乾燥と寒さ
  • 睡眠不足・疲労・ストレス
  • 喫煙や過度の飲酒
  • アレルギーによる粘膜防御力の低下

これらは免疫力を低下させ、感染リスクを高める因子です。

主な症状と経過

典型的な症状

  • 鼻水、鼻づまり
  • 喉の痛み、声のかすれ(嗄声)
  • 咳(乾いた咳や痰がらみ)
  • 発熱(微熱〜高熱)
  • 頭痛、関節痛、筋肉痛
  • 倦怠感、悪寒

症状の推移

日数 症状の傾向
発症初期(1~2日) 喉の違和感、鼻水、軽い咳が出始める
中盤(3~5日) 症状がピークに。咳・痰・倦怠感・発熱が強まる
回復期(6日目以降) 少しずつ症状が軽くなるが、咳は2週間ほど長引くことも

夜間の咳や喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)がある場合、気管支炎や喘息の合併症の可能性があるため受診をおすすめします。

治療法とセルフケア

基本は対症療法

風邪の治療は、症状を和らげる「対症療法」が中心です。

・安静:無理せず休養をとる

・水分補給:発熱や発汗による脱水防止
・加湿:粘膜保護と痰の排出を助ける
・うがい・鼻洗浄:ウイルス排除・炎症抑制
・薬物療法:
  • 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)
  • 咳止め、去痰薬、点鼻薬、トローチなど

抗生物質の適応について

ウイルス性風邪には抗生物質は無効です。 所見や症状、経過から細菌感染が疑われるときに限り、医師が処方します。

ネブライザー治療

当院では、必要に応じて霧状の薬剤を鼻や喉に届ける吸入療法を実施します。喉の腫れ・痛み・咳の緩和に有効です。

風邪に効く漢方薬(症状別)

漢方名 対応する症状
葛根湯 風邪の初期・寒気があるとき
桔梗湯・甘草湯 喉の痛み
小青竜湯 鼻水・くしゃみが強いとき
麦門冬湯 咳や痰が多いとき

体質や症状により合う漢方薬が異なるため、自己判断せず専門医にご相談ください

風邪をこじらせないために:家庭での注意点

  • 室温は20〜24℃、湿度は50〜60%に保つ
  • 首・足元を冷やさない
  • 入浴は無理のない範囲で
  • 消化に優しい食事を(おかゆ・うどん・スープなど)

家庭内感染を防ぐには

  • 手洗い・うがい・手指消毒を徹底
  • 食器・タオルの共用を避ける
  • 家庭内でもマスク着用(会話時)
  • 1日3回以上の換気(5〜10分程度)
  • ドアノブ・リモコンなど共用部分の消毒

急性上気道炎の予防法

  • マスクの着用(特に人混み・乾燥時)
  • 規則正しい生活と十分な睡眠
  • 栄養バランスの良い食事
  • 適度な運動と日光浴
  • 室内の加湿と禁煙
  • ワクチン接種(インフルエンザなど)

風邪とインフルエンザの違い

比較項目 風邪 インフルエンザ
発熱 微熱が多い 高熱(38℃以上)が突然出る
主な症状 鼻水・喉の痛み 関節痛・筋肉痛・頭痛が強い
重症化 少ない 肺炎・脳炎などの合併症に注意
ワクチン なし あり(予防効果あり)

合併症に注意

風邪をこじらせると以下のような合併症を起こすことがあります:

  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 副鼻腔炎
  • 中耳炎
  • 扁桃周囲膿瘍
  • 敗血症(まれだが重症)

特に高齢者や基礎疾患のある方は重症化リスクが高いため注意が必要です。

医療機関を受診すべきタイミング

  • 高熱(38.5℃以上)が3日以上続く
  • 呼吸が苦しい、息が速い
  • 食事や水分が取れない
  • 咳が2週間以上続く
  • 耳や鼻の奥が強く痛む
  • 声のかすれが1週間以上改善しない

乳幼児・高齢者・持病がある方(喘息・糖尿病・心疾患など)は、軽症でも念のため受診を。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子供は風邪が治るまで時間がかかりますか?

はい。免疫が未発達な乳幼児は回復に時間がかかりやすく、脱水や呼吸困難に注意が必要です。

Q2. 睡眠は回復に効果的ですか?

質の高い睡眠は免疫力を高め、サイトカインや抗体の生成を促すため、回復を早めます。

Q3. 味覚や嗅覚に影響はありますか?

鼻づまりや粘膜の炎症により、一時的に嗅覚・味覚が鈍くなることがありますが、通常は数日〜2週間で回復します。

Q4. ビタミンCや栄養ドリンクは効果的?

治癒を劇的に早める科学的証拠は限定的。バランスの良い食事・十分な水分と睡眠で免疫を整えることが最も効果的です。

Q5. 妊娠中でも市販薬を飲んで大丈夫?

週数や体調で使える薬が異なります。市販薬でも胎児に影響する成分があるため自己判断は避け、必ず医師・薬剤師に相談してください。

Q6. 家族にうつさないコツは?

手洗い・マスク・換気・タオル別使用を徹底し食器も分けましょう。発症後2〜3日はウイルス量のピークなので看病者もマスクと手指消毒を忘れずに。

Q7. 風邪とインフルエンザの見分け方は?

風邪は鼻水・喉痛が主体、インフルエンザは突然の高熱と関節痛が特徴。48時間以内に検査し抗ウイルス薬を開始すれば重症化を防げます。

Q8. 抗生物質は飲んだほうが早く治る?

風邪の約9割はウイルス性で抗生物質は無効。自己判断服用は副作用や耐性菌の原因になり、医師が細菌感染を疑ったときのみ処方されます。

Q9. 漢方薬はいつから使うと効果的?

葛根湯は寒気・肩こりがある初期、小青竜湯は水様性鼻水が強い時など早期服用が◎。長期連用は副作用もあるため医師に相談を。

Q10. 予防接種で風邪も防げますか?

インフルエンザやRSなど特定ウイルスにはワクチンが有効ですが、200種以上ある風邪ウイルスには未対応。手洗い・マスク・睡眠で予防を。

まとめ

急性上気道炎(風邪)は、ウイルスによって上気道に炎症が起きるごく一般的な病気です。多くは自然に回復しますが、咳の長期化や合併症には注意が必要です。正しい生活習慣、手洗い・マスクなどの予防、症状に応じた適切な対処で悪化を防げます。
 重症化リスクのある方や症状が長引く場合は、早めの受診をおすすめします。

参考文献

  • MSDマニュアル家庭版|急性上気道感染症
  • 時事メディカル|急性上気道炎(かぜ症候群)
  • 公益社団法人 日本医師会|かぜ症候群
  • 日本呼吸器学会|急性上気道炎診療ガイドライン(2017)

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