アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは
アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜にアレルギー性の炎症が起こる病気です。
原因となる物質(アレルゲン)には花粉、ダニ、ハウスダスト、ペットの毛などがあり、これらが鼻の粘膜に付着すると、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状を引き起こします。
原因とアレルゲンの種類
アレルギー性鼻炎の主な原因には以下があります:
- 花粉:スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど
- ダニ・ハウスダスト:ダニの死骸やフン、ホコリ
- ペットの毛やフケ:犬や猫など
- カビ:室内外のカビ
季節性と通年性の違い
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
特定の季節に飛散する花粉に反応。
日本では2~4月のスギ・ヒノキ花粉が代表的です。
通年性アレルギー性鼻炎
ダニやハウスダストなど、一年を通じて存在するアレルゲンに反応します。
季節によって悪化することもあります。
代表的な症状
- サラサラとした水様性の鼻水
- 鼻づまり
- 鼻のかゆみ
- 目の痒み・充血
- 喉の違和感
- 頭痛、倦怠感
合併症に注意
放置すると以下を引き起こすことがあります。
- 副鼻腔炎
- 中耳炎
- 喘息
- 睡眠時無呼吸症候群
日常生活への影響
- 睡眠障害による日中の眠気や集中力低下
- 学習や仕事の能率低下
- 対人関係への影響
- 小児では行動・学習、高齢者では薬の副作用リスク
診断と検査方法
- 問診:症状、時期、家族歴など
- 鼻鏡・内視鏡検査
- 血液検査(特異IgE抗体)
- 皮膚プリックテスト
治療法
抗原の除去(環境整備)
- ダニ・ハウスダスト:こまめな掃除、防ダニ寝具、湿度管理
- 花粉:マスク・メガネ、帰宅後の洗顔・衣服の花粉除去、換気の工夫
薬物療法
- 抗ヒスタミン薬
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
- ステロイド点鼻薬
アレルゲン免疫療法
- 皮下免疫療法:注射による通院治療
- 舌下免疫療法:自宅で服用可能。ダニ・スギ花粉に対応
外科的治療
- 後鼻神経切断術
- 鼻甲介手術、鼻中隔矯正術
免疫療法について
アレルゲン免疫療法は、アレルギー反応の根本原因である免疫の過剰な反応を調整し、体質の改善を目指す治療法です。
適切に継続すれば、症状の長期的な軽減や完治に近い状態を期待できる有力な治療法です。
しかし、副作用や治療期間に関する理解も重要です。
皮下免疫療法(注射)(当院では対応しておりません。)
- 治療初期には、注射部位の腫れやかゆみなどの局所反応が見られることがあります。
- まれに全身症状(発熱、倦怠感)やアナフィラキシーなどの重篤な副反応が起こる可能性があるため、注射後は医療機関内で30分程度の待機が推奨されます。
- 月に数回の通院が必要で、特に忙しい方や小児にはやや負担になることがあります。
舌下免疫療法
- 舌の下に薬剤を投与する方法で、自宅での服用が可能です。
- 初期には舌や喉のかゆみ・違和感が出ることがありますが、多くは数日~数週間で軽快します。
- ごくまれに消化器症状や軽度の喘息発作が報告されることもあります。
治療期間と効果
- いずれの免疫療法も、効果を実感するまでに数ヶ月~1年ほどかかることが多く、3~5年程度の継続治療が基本です。
- 治療を中断すると効果が十分に得られないことがあるため、医師の指導のもとで計画的に継続することが重要です。
免疫療法は、従来の薬物治療で効果が不十分な方や、長期的な体質改善を望む方にとって、有効な選択肢となります。
アレルギー性鼻炎と他のアレルギー疾患との関係
アレルギー性鼻炎は、喘息やアトピー性皮膚炎と関連して発症することが多く、「アトピー性三徴候」と呼ばれます。
- IgE抗体を介したI型アレルギー反応が共通の仕組みです。
- 鼻と気道はつながっており、「one airway, one disease」という概念があります。
- 実際にアレルギー性鼻炎患者の約30~40%が喘息を併発していると報告されています。
複数のアレルギーを持つ場合は、耳鼻科だけでなく皮膚科や呼吸器内科と連携した治療が推奨されます。
予防のポイント
花粉症対策
- 花粉情報をチェックし、飛散量が多い日は外出を控える
- 花粉防止マスク・メガネ・衣類の活用
- 洗顔・うがい・衣服の花粉除去
ダニ・ハウスダスト対策
- 寝具の高温洗濯、防ダニカバー
- フィルター付き掃除機を使用
- 室温・湿度を適切に管理
こんなときは耳鼻科受診を
- 数週間以上、症状が改善しない
- 市販薬でも効果がない
- 生活に支障をきたす
- 合併症が疑われる
まとめ
アレルギー性鼻炎は生活の質に大きな影響を与える疾患ですが、適切な治療と予防策により症状を大きく改善できます。
耳鼻咽喉科での正確な診断と治療によって、快適な日常生活を取り戻しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. アレルギー性鼻炎は遺伝しますか?
両親にアレルギー体質がある場合、発症リスクは50~80%とされています。
Q. ストレスと関係はありますか?
ストレスによって免疫バランスが乱れ、症状が悪化することがあります。
Q. 職業によってリスクは変わりますか?
農業従事者や花卉栽培者、獣医、美容師などは職業性アレルギーのリスクがあります。
Q. 睡眠に影響しますか?
鼻閉があると睡眠の質が低下し、日中のパフォーマンスにも影響します。小児では成長や学習にも影響が出ることがあります。
参考文献
- アレルギー性鼻炎 - MSDマニュアル家庭版
- アレルギー性鼻炎とは?原因、症状、治療法について解説 | メディカルノート
- アレルギー性鼻炎|公益社団法人 日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会
- 花粉症環境保健 マニュアル 2022