メニュー

脱毛症

脱毛症とは、髪の毛の異常な脱落や薄毛が進行する状態を指します。 髪の毛は「成長期→退行期→休止期」のサイクル(毛周期)を繰り返していますが、このサイクルが乱れると、髪が十分に育たないまま抜けてしまい、脱毛症が進行します。 原因や脱毛のパターンによっていくつかのタイプに分かれます。

脱毛症の種類と特徴

円形脱毛症(自己免疫による脱毛)

突然、丸く境界がはっきりした脱毛斑が出現するのが特徴です。自己免疫疾患の一つと考えられており、自分の免疫が誤って毛根を攻撃することで起こります。

主なタイプ:
  • 単発型:1〜数か所の円形脱毛
  • 多発型:複数箇所の円形脱毛
  • 全頭型:頭髪全体の脱毛
  • 汎発型:頭髪だけでなく眉毛やまつ毛、体毛まで脱毛する重症型
原因・悪化因子:

ストレス、遺伝体質、自己免疫異常、アトピー素因など

男性型脱毛症(AGA)

男性に多く見られる、頭頂部や前頭部の髪が徐々に細く、薄くなる進行性の脱毛です。 男性ホルモン(DHT)による毛根への作用が主な原因で、遺伝的素因も関与します。

特徴:
  • 思春期以降に発症
  • 徐々に進行し、自然治癒は困難

女性型脱毛症(FAGA)

女性に多いびまん性脱毛で、分け目や頭頂部を中心に髪のボリュームが減少します。 出産、更年期、ピルの中止などホルモンの変化や、栄養不足、ストレスが関与します。

産後脱毛症(分娩後脱毛)

出産後2〜4か月ごろに髪が大量に抜ける現象です。 妊娠中に高まっていたエストロゲンが急激に減少することで、毛周期の休止期が一気に訪れ、一過性に抜け毛が増えるのが特徴です。

特徴:
  • 通常6〜12か月で自然に改善
  • 頭皮ケアや栄養バランスの改善が有効
  • 授乳中の外用薬を含む薬物使用は医師に要相談

トリコチロマニア(抜毛症)

自分の髪を自分で引き抜いてしまう癖(精神的習慣)による脱毛です。 主にストレス、不安、緊張などの心理的要因が関係し、幼児から思春期の子ども、成人女性まで幅広い年齢層に見られます。

特徴:
  • 無意識または意図的に髪を抜いてしまう
  • 抜毛部位が不規則で、左右非対称な脱毛
  • 精神科的なアプローチと皮膚科的管理が必要

その他の脱毛症

  • 牽引性脱毛症:ポニーテールやエクステなどで前頭部・側頭部に脱毛が生じます。髪型の見直しが予防の第一歩です。
  • 瘢痕性脱毛症:やけど、外傷、膠原病などで毛包が破壊され、再生が困難な状態です。

脱毛症の原因一覧

原因

内容

自己免疫異常

円形脱毛症で毛包を攻撃

ホルモン変化

AGA、FAGA、産後脱毛症

精神的ストレス

トリコチロマニア、円形脱毛症

物理的刺激

牽引性脱毛症、外傷による瘢痕性

栄養不足

鉄・亜鉛・たんぱく質の不足など

薬剤

抗がん剤、抗うつ薬、降圧剤など

脱毛症の検査と診断法

皮膚科では以下の検査を組み合わせて、正確な診断を行います。

  • 視診と問診:脱毛パターン、家族歴、発症時期などを確認
  • ダーモスコピー:頭皮と毛根の観察
  • 血液検査:必要があれば貧血、甲状腺異常、などのスクリーニング

脱毛症の治療法

円形脱毛症

  • 軽症:ステロイド外用、局所注射
  • 中等症以上:内服薬(抗アレルギー薬、ステロイドなど)、エキシマライト


※エキシマライト:当院では行っておりませんので、治療適応と判断した場合は施術可能な医療機関へ紹介させていただきます。

AGA・FAGA

  • 内服薬:フィナステリド、デュタステリド(男性のみ。女性は禁忌)、スピロノラクトン(FAGAに対して使用、妊娠中・妊娠希望は不可のため確実な避妊が必要)
  • 外用薬:ミノキシジル
  • 自費治療:メソセラピー、再生医療

 

産後脱毛症

  • 基本的には経過観察
  • 栄養・睡眠・育児負担の調整が回復を促進

トリコチロマニア

  • 本人の自覚と行動療法
  • 必要に応じて精神科との連携

自宅でできるケアと予防

  • 頭皮を清潔に保つ(洗いすぎ・こすりすぎ注意)
  • 栄養バランスの良い食事(鉄・亜鉛・ビタミン)
  • 十分な睡眠とストレスケア
  • 強く引っ張る髪型は避ける
  • 過度な整髪料やカラーリングを控える

皮膚科受診の目安

以下のような場合には、自己判断せず皮膚科の受診をおすすめします。

  • 急激に脱毛が進行した
  • 円形またはまだらな脱毛がある
  • 髪以外の眉毛や体毛も抜けている
  • かゆみ・痛み・赤みを伴う
  • 出産後の抜け毛が半年以上続いている
  • 自分で髪を抜いてしまう癖がある

まとめ

脱毛症は「ただの抜け毛」と見過ごされがちですが、自己免疫やホルモン、ストレスなど多様な要因が関与する疾患です。特に円形脱毛症、AGA、FAGA、産後脱毛症、トリコチロマニアなどは、タイプに応じた診断と治療が不可欠です。
 

よくある質問(FAQ)

Q1. 最近抜け毛が増えたのですが、受診した方がいいですか?
 A. 急な抜け毛や地肌の露出が気になる場合は、早めの受診が安心です。自己判断せずに原因を調べることが大切です。

Q2. AGA(男性型脱毛症)は治りますか?
 A. AGAは進行性ですが、内服や外用治療で進行を遅らせたり改善できることがあります。早期治療が効果的です。

Q3. 女性の薄毛(FAGA)も治療できますか?
 A. はい、女性のびまん性脱毛にも治療法があります女性専用の内服薬やメソセラピーで改善が期待できます。

Q4. ミノキシジルは誰でも使えますか?
 A. 高血圧や心疾患のある方には注意が必要です。使用前には医師の診察と適正の判断が必要です。

Q5. 円形脱毛症は自然に治ることもありますか?
 A. 軽症例では自然治癒もありますが、再発や悪化を防ぐため、早めに皮膚科を受診するのが望ましいです。

Q6. 出産後の抜け毛が気になります。大丈夫でしょうか?
 A. 産後2〜4か月に一時的に増えることが多く、通常半年〜1年で改善します。ご心配な場合はご相談ください。

Q7. 子どもでも脱毛症になりますか?
 A. はい、円形脱毛症や抜毛癖(トリコチロマニア)は小児にも見られます。早期対応が改善につながります。

Q8. 食生活は関係ありますか?
 A. 鉄や亜鉛、たんぱく質の不足は脱毛の一因です。治療とあわせてバランスの良い食事が重要です。

Q9. シャンプーで治ることはありますか?
 A. シャンプーは頭皮環境を整える補助にはなりますが、治療効果は限定的です。根本治療には医師の診断が必要です。

Q10. メソセラピーはどんな治療ですか?
 A. 有効成分を頭皮に直接注入する治療法で、毛髪の成長を促します。内服と併用することで高い効果が期待できます。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会 脱毛症診療ガイドライン 2017
  2. 日本臨床皮膚科医会「脱毛症の皮膚科的アプローチ」
  3. Messenger AG, Sinclair R. "Follicular disorders." In: Rook’s Textbook of Dermatology, 9th Edition. Wiley-Blackwell.
  4. Blume-Peytavi U, et al. "Hair growth and disorders." Springer, 2008.
  5. 日本精神神経学会「トリコチロマニアの診断と治療指針」

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME