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後鼻漏

「喉に鼻水が流れて不快」「痰が絡むけれど出ない」
そんな症状は後鼻漏(こうびろう)と呼ばれます。慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・上咽頭炎などが背景に潜み、放置すると長引く咳や声枯れ、不眠の原因になります。

後鼻漏とは?

鼻腔や副鼻腔で産生された粘液(鼻水)が上咽頭→中咽頭へ過剰に流下し、喉に張り付く・痰が絡む・咳払いが止まらない。これが後鼻漏です。正常でも 1 日 1 L 近い鼻水を無意識に飲み込んでいますが、

  1. 産生過多
  2. 粘性亢進
  3. 排出経路障害
    のいずれかが加わると自覚症状が出現します。

後鼻漏の原因:なぜ鼻水が喉に回るのか?

主な原因疾患 メカニズム 代表的所見・症状
副鼻腔炎(急性/慢性) 膿性分泌物が後鼻孔から滴下 黄〜緑色・粘稠、嗅覚低下
アレルギー性鼻炎 好酸球性炎症で水様分泌亢進 透明水様、くしゃみ発作、鼻閉
慢性上咽頭炎 粘膜の慢性刺激・リンパ濾胞肥大 肉芽状粘膜、EATで易出血
鼻中隔彎曲・鼻茸 機械的閉塞で粘液停滞 ポリープ・強彎曲を内視鏡で確認
GERD(逆流性食道炎) 胃酸逆流が上咽頭を刺激 胸やけ・呑酸、夜間咳悪化

乾燥環境・喫煙・多量飲酒も粘液を粘稠化し症状を助長します。

後鼻漏の症状と生活への影響

  • 喉に粘つく塊感、しつこい咳払い
  • 起床時の イガイガ・痰が絡む感じ
  • 声枯れ、口臭、味覚低下
  • 集中力低下・不眠(就寝時咳)

後鼻漏の鑑別と検査

  1. 問診・視診:症状経過・季節性・既往歴
  2. 鼻咽腔ファイバースコピー:粘液の性状・滴下部位・粘膜炎症を直視
  3. 副鼻腔 CT:副鼻腔陰影・骨隔壁肥厚・ポリープ確認
    (当院では施行しておりません)
  4. アレルギー検査
  5. 喉頭ファイバー・胃内視鏡:GERD/咽喉頭逆流の合併確認

原因別 後鼻漏の治療

原因 薬物療法 手技/処置 外科
副鼻腔炎 抗菌薬・マクロライド少量長期・去痰薬・鼻噴霧ステロイド ネブライザー 内視鏡下副鼻腔手術
アレルギー 抗ヒスタミン・ロイコトリエン拮抗薬・点鼻ステロイド 舌下免疫療法
上咽頭炎 消炎酵素薬・漢方(麦門冬湯・半夏厚朴湯) EAT(塩化亜鉛擦過)
構造異常 鼻中隔矯正・鼻茸切除
GERD PPI/P-CAB・生活指導  –

後鼻漏のセルフケア・予防

  • 鼻うがい:37 ℃ 等張食塩水を 200 mL ずつ片鼻から注入
  • 睡眠姿勢:横向き就寝
  • アレルゲン対策:マスク・眼鏡、寝具カバー高密度生地
  • 生活習慣:禁煙・節酒・香辛料控えめ

受診の目安(チェックリスト)

該当 チェック項目
症状が 2 週間以上 継続または増悪傾向
黄色~緑色で悪臭のある鼻水/痰が続く
市販薬・鼻うがいを 1 週間試しても改善しない
夜間咳・喘鳴で 睡眠障害 がある
声枯れ・嗅覚低下・発熱を反復
過去に副鼻腔手術歴/鼻ポリープ指摘歴
GERD 治療中でも咽喉違和感が残る

1 つでも当てはまれば耳鼻咽喉科受診を推奨されます。
適切な検査で原因を可視化し、適切な治療につなげます。

まとめ

後鼻漏は鼻や副鼻腔で作られた粘液が過剰・粘稠化して喉へ流れ込み、痰絡み・咳払い・声枯れなど多彩な不快症状を引き起こします。副鼻腔炎・アレルギー・上咽頭炎・GERD など原因は多岐にわたり、専門的検査での鑑別が不可欠となります。
早期の治療開始で睡眠や仕事の質を大幅に向上させましょう。

よくある質問(Q&A) 

1. 鼻水が喉に落ちる理由は?

鼻・副鼻腔で産生された粘液が後方へ流れ過ぎるため。炎症やアレルギーで産生過多・粘性亢進が起こる。

2. 風邪との違いは?

後鼻漏は2週間以上持続し季節変動や慢性炎症が背景。風邪は 7~10 日で軽快。

3. 痰が絡む=必ず後鼻漏?

高粘度痰・咽頭異物感は典型症状。耳鼻科受診で原因鑑別を。

4. 何科を受診?

耳鼻咽喉科。上咽頭~副鼻腔を内視鏡と CT で評価できる。

5. 鼻うがいは安全?

37℃ 等張食塩水を用いれば刺激が少なく有効。痛みが強い場合は医師へ相談。

6. 治らないときの次の手段は?

原因に応じ EAT、長期マクロライド少量療法、鼻内手術を検討。

7. 透明な鼻水でも後鼻漏?

アレルギー性鼻炎などで透明水様鼻漏が喉に流れる場合あり。

8. 市販薬で十分?

一時的緩和は可。しかし 2 週間以上続くなら専門治療が推奨。

参考文献

  • 日本耳鼻咽喉科学会『慢性副鼻腔炎 診療ガイドライン 2020』
  • 日本アレルギー学会『アレルギー性鼻炎 診療ガイドライン 2022』
  • Shoji K, et al. “Clinical features and treatment outcomes of patients with postnasal drip.” Auris Nasus Larynx 2020
  • 岡本美孝ほか『上咽頭擦過治療マニュアル』医学書院 2020
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