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帯状疱疹

帯状疱疹とは

帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化して起こるウイルス性皮膚疾患です。子どものころに「水ぼうそう(水痘)」として感染したウイルスが、治癒後も神経節に潜伏し、加齢・ストレス・免疫力の低下などをきっかけに再活性化して発症します。

主な症状

●     皮膚症状:かゆみや違和感から始まり、数日以内に赤い斑点と水ぶくれ(疱疹)が帯状に出現。体の片側に限局し、胸・腹部・顔面などに多い。

●     神経痛:発疹前から焼けるような痛みやしびれ。発疹消失後も痛みが続く場合があり、これを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼びます。

好発部位

●     胸部〜背部(肋間神経)

●     顔面(三叉神経)

●     腰部・臀部

●     上肢・下肢(まれ)
 ※顔面例では、視神経・聴神経の合併症に注意が必要です。

原因・誘因

●     加齢(50歳以上に多い)

●     過労・ストレス

●     糖尿病・がんなどの基礎疾患

●     ステロイドや抗がん剤治療

●     免疫抑制状態(移植後・膠原病など)

鑑別診断

●     単純疱疹(HSV)

●     接触皮膚炎(かぶれ)

●     帯状神経痛(皮疹なし)

●     急性リンパ節炎

●     蕁麻疹・虫刺され

●     自己免疫性水疱症(天疱瘡など)
 ※初期は非典型例もあり、診察・経過観察が重要です。

検査と診断

●     視診・問診が基本

●     確定診断:病変部からのVZV PCRまたは抗原迅速検査(デルマクイック®:10〜15分で判定)

●     抗体検査(VZV IgM/IgG):補助的に用いられる

治療

●     抗ウイルス薬:発症から72時間以内の開始が理想。ただし、72時間を超えても新規疱疹出現・重症例・顔面例では投与を検討。

●     鎮痛薬:アセトアミノフェン/NSAIDs、神経障害性疼痛にはプレガバリン・ガバペンチン、三環系抗うつ薬、リドカイン貼付薬など。

●     神経ブロック:難治性の神経痛に。


帯状疱疹後神経痛(PHN)

皮膚症状が治癒しても発疹出現から90日以上続く神経痛。焼けるような持続痛・アロディニア・刺すような痛みが特徴で、生活の質を著しく損なうため早期からの対策が重要です。

 

予防ワクチン

1.    乾燥弱毒生水痘ワクチン

○     接種:1回

○     効果:約50%、持続数年

○     対象:50歳以上の免疫正常者

○     免疫抑制状態には禁忌

2.    不活化ワクチン(シングリックス®)

○     接種:2回(通常2カ月間隔、2〜6カ月で可)

○     効果:90%以上、少なくとも10年持続

○     対象:50歳以上に加え、18歳以上で免疫抑制状態の方にも適応

受診の目安

●     片側の痛み+赤い斑点や水疱

●     痛みのみで皮疹がまだない

●     顔・目・耳周囲に症状

●     免疫低下状態で発疹・発熱

●     高齢者で強い痛みにより睡眠障害がある場合

自宅でのケア

●     患部をこすらず清潔に

●     水疱は潰さず医師の指示に従う

●     未感染者(小児・妊婦)との接触を避ける(痂皮化までは接触感染注意)

●     入浴は可能だが湯船は短時間、シャワーが望ましい

FAQ

Q. 帯状疱疹は人にうつりますか? → 帯状疱疹自体はうつりませんが、水ぼうそう未感染者に水痘としてうつる可能性があります。

Q. 自然治癒しますか? → 軽症例では可能ですが、後遺症のリスクがあるため治療が望ましいです。

Q. 痛みはどれくらい続きますか? → 数週間~数か月続くこともあり、高齢者では長期化する傾向があります。

Q. 水ぶくれは潰していいですか? → 潰さず、医師の指示通りに処置してください。

Q. お風呂は入っていい? → 入浴可能ですが、シャワーが望ましいです。

Q. 帯状疱疹ワクチンは誰でも接種できますか? → 50歳以上の方が対象。不活化ワクチンは免疫力が低い方も接種可能です。

Q. 顔に出た場合の注意点は? → 目・耳の合併症の恐れがあるため、早急に皮膚科・眼科・耳鼻科を受診しましょう。

Q. どのタイミングで受診すべき? → 発症から72時間以内の受診が理想です。

Q. 再発することはありますか? → まれに再発あり。再発リスクが高い場合はワクチンも検討します。

まとめ

帯状疱疹は水痘ウイルスの再活性化による皮膚疾患で、早期の抗ウイルス薬治療が後遺症予防に重要です。50歳以上ではワクチンによる予防が推奨され、免疫抑制状態の方にもシングリックスが有効です。特に顔面例や強い痛みがある場合は速やかな受診が必要です。

参考文献

●     日本皮膚科学会. 帯状疱疹診療ガイドライン2020
●     国立感染症研究所「水痘・帯状疱疹ウイルス感染症」
●     CDC. Shingles (Herpes Zoster)
●     Oxman MN et al. NEJM, 2005(生ワクチン)
●     Lal H et al. NEJM, 2015(ZOE-50, シングリックス)
●     Cunningham AL et al. NEJM, 2016(ZOE-70, シングリックス)

 

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